村田選手の技術的な事
私は村田選手がプロに転向した時から応援しています。
これまでの日本人の重量級選手にはない、ポテンシャルを持っているから。ロンドンオリンピックを見た時から、プロになってほしいと思っていました。
理由は二つ。
シャレにならないパンチ力。
固いガード。
これまで私がボクシングを見てきた中で、日本人ボクサーとしては突出していると思っています。
さて。
エンダム(ヌジカムの印象が強いですが)選手との1stでは、ダウンを奪いながら勝てなかった事に対し「手数が少ない」「パンチを浴びすぎ」などの評価を散見しました。
しかし。
エンダム選手のパンチはほとんどクリーンヒットせず、ほとんどを村田選手がブロック。
村田選手は派手ではないパンチを、ガードの隙間を通す。
もしくはガードの上から打ち、ラウンドが進むにつれて、エンダム選手のガードを下げる。
素晴らしい試合展開を作り上げていました。
ところが。
足を使い、タッチボクシングにもなっていないパンチを打っていたエンダム選手に、ジャッジが点数をつけるというありえない状況になってしまいました。
「もうチャンスはないのかな」と諦めかけていましたが、いつもは仕事しないWBA会長が出てきて再戦へ。チャンスをものにしてチャンピオンになります。
エンダムとの2戦目は、村田選手が手数を増やしたのではなく、ガードの上から打たれても脅威なのをエンダム選手が分かっているのに、村田選手が追い足を変えた事で、打たれるポイントに移動したのが全てでした。
次のブランダムラ選手との試合は、技術的には少し上積みできただけだったと思っています。それでも「ミドルで勝つ」というのは凄い事なのですが。
よく「弱い相手を選んだ」などという方もいますが。
ミドルのランカーで、イージーな相手なんていませんよ。
ただ、前回のエンダム選手との試合でつかみかけた「追い足」は、ほとんど見られずだったのが気になっていました。
ブラント選手との一戦目で、不安は的中。
プレッシャーをかける追い足は全く使えず、調整を失敗したのかと思われるフワフワした足取りで、パンチで起こされ、距離を作られては詰められ、何も出来ないまま終わってしまいました。
これで終わってしまうのか?
そんなはずはない、と見たブラント選手との2戦目。
ゴングと同時に打ってきたブラント選手のジャブに対して、村田選手は身体を沈めています。
瞬間的に「行けるかな?」と。
そして、プレッシャーをかけながら、三角に追っていった時、「勝てる!」と声を上げました。随分練習したんだろうな、と思いましたね。
三角に追う、というのは分かりづらいかもしれませんが、丸く足を使う、サークリングする相手を同じように追っていては、捕まえる事は出来ません。また、パンチが当たる角度を作る事が、非常に難しくなります。
この試合、やたらと村田選手が自分有利に見える状況で、ブラント選手の正面にいたように見えたと思いますが、追って、捕まえて、動けないようにしていたという事です。
ここでフジテレビ、いい事を言いました。
「村田が!ガードの上から!破壊していくー!」
良い右が入って、ラッシュに入った時に実況から出た言葉ですね。
映像を確認してください。
ブラント選手の上腕部、特に左腕。真っ赤になっています。
ガードの上から打って、効かせる事が出来る中重量級日本人ボクサー。
これまで見たことがありませんでした。
最後、かなりバランスが悪くなって、本人が言うようにヘロヘロになってしまいましたが、あのままブラント選手は打たれていると、本当に致命傷になりかねなかったので、止めて正解だったと思っています。
それがあっての今日。
前回の初防衛戦では、勝ったもののあまりいところはなかった。
ところが今日。
追い足も完璧に近かったと思いますし、一番驚いたのは上体の角度を変えていた事でした。これは今までに見られなかった。
相手のパンチを殺してましたね。パンチを浴びるシーンもありましたが、完全なクリーンヒットはたぶん2発だけ。ガードも固い。
気になったのはボディを打たれる時には上体が正対していた事と、左足の膝が硬かった事でしょうか。
そして今日も、バトラー選手の上腕は、2Rの時点で真っ赤に。
実況ブログでも書いたのですが、鍵が左ボディだと思っていて、狙ってほしかったのですが、バトラー選手、数発浴びた分が地味に効いていたのでしょう。左ボディを打たれないようにジャブを出したら、今度は右ボディを浴びだすという最悪の展開(村田選手にとっては願ったりですが)に。
おまけに左耳も真っ赤になっていたので、浴び続けた右クロスが、上体を振って避けに行ったら後頭部付近にヒット。最後は左フックで危ない倒れ方でしたね。
村田選手、今日の試合でピークにかなり近づいたと思います。
強い選手とやるなら今です。
今日の技術は、トップ・オブ・トップと村田選手が言う相手とやっても、通用する部分が大きいです。
そして私の願望は、
この技術を持った上でバチバチのシバきあいをして欲しいのです。
それが最後の試合ではなく、私は勝つチャンスは十分にあると思っています。
ボブおじさんが後ろでニコニコしていたので、ビッグマッチを期待しましょう。